新型コロナウイルス5類移行後の企業対応

 令和5年5月8日以降、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類へ引き下げられます。





変更後は、感染症法に基づき、行政が外出自粛を要請することはなくなり、外出を控えるかどうかは、季節性インフルエンザと同様に、個人の判断に委ねられることになります。

5類移行後に変わること

新型コロナウイルス対応は大幅に変わります。

  • 政府として一律に日常における基本的感染対策を求めることはない。
  • 感染症法に基づく、新型コロナ陽性者及び濃厚接触者の外出自粛は求められなくなる。
  • 限られた医療機関でのみ受診可能であったのが、幅広い医療機関において受診可能になる。
  • 医療費等について、健康保険が適用され1割から3割は自己負担が基本となるが、一定期間は公費支援を継続する。

外出自粛の推奨期間・周りの方への配慮について

 令和5年5月8日以降、法律に基づく外出自粛は求められません。外出を控えるかどうかは個人の判断に委ねられますが、外出自粛の推奨期間や周りの方への配慮については以下の通りです。

  1. 外出を控えることが推奨される期間
    • 発症日を0日目(※1)として5日間は外出を控えること(※2)
    • かつ
    • 5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見ることが推奨されます。症状が重い場合は、医師に相談してください。
    • (※1)無症状の場合は検体採取日を0日目とします。
    • (※2)こうした期間にやむを得ず外出する場合でも、症状がないことを確認し、マスク着用等を徹底してください。
    • また、学校保健安全法施行規則においても、「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」を新型コロナウイルス感染症による出席停止期間としています。
  1. 周りの方への配慮
    • 10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があることから、不織布マスクを着用したり、高齢者等ハイリスク者と接触は控える等、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。発症後10日を過ぎても咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、マスクの着用など咳エチケットを心がけましょう。

従業員から新型コロナウイルス感染の連絡を受けたら

 令和5年5月8日以降、新型コロナウイルスに感染しても法律に基づく外出自粛は求められないため、季節性インフルエンザに罹患した際の対応と同様になります。従業員本人の体調や業務内容、各企業の就業規則の内容に応じてケース毎に対応が求められます。

一例をご紹介いたします。

  • 高熱や咳などの体調不良により就業できない場合
    • 従業員が自主的に大事をとって欠勤もしくは有給休暇を取得する事になります。通常の病欠扱いとなるため、給与から欠勤分を控除します。有給休暇を取得した場合はその日数分の給与を支払います。
  • 自覚症状無く就業可能(本人の出社意向が強い)場合
    • テレワーク可能な業務であれば、一定期間のテレワークを推奨します。





      テレワークが難しい業務であれば、検温等による体調把握と不織布マスクの着用やアルコール消毒等での感染対策の徹底を求めたうえで業務遂行を認める。または、休業・自宅待機を命じることとなります。





      休業・自宅待機を命じる場合は次の項目をご確認ください。
  • 高齢者などのハイリスク者との接触が多い職場のため、会社から休業・自宅待機を命じる場合
    • 会社側の安全配慮義務の履行に基づくものであるため休業手当(平均賃金の6割以上)の支払が必要となります。安全配慮義務から従業員に休業を命じる場合は、就業規則に規定しておきましょう。
  • 新型コロナウイルスの特別休暇制度を設けた場合
    • 就業規則に基づき特別休暇を取得させましょう。特別休暇の有給・無給の扱いは就業規則にて規定しておきましょう。

 従業員の家族が新型コロナウイルスに感染した場合も、濃厚接触者の特定は無くなり、季節性インフルエンザに罹患した際の対応と同様になります。

新型コロナウイルスに係る傷病手当金の申請について

 新型コロナウイルスに係る傷病手当金については、臨時的な取扱いとして、療養担当者意見欄(申請書4ページ目)の証明の添付を不要としておりましたが、申請期間(療養のため休んだ期間)の初日が令和5年5月8日以降の傷病手当金の支給申請については、他の傷病による支給申請と同様に、傷病手当金支給申請書の療養担当者意見欄(申請書4ページ目)に医師の証明が必要となります。(令和5年5月9日追記)

新型コロナウイルスに係る労災申請について

 令和5年5月8日以降も取扱いに変更はありません。業務に起因して感染したものであると認められる場合には、労災保険給付の対象となります。

 但し、5類移行前は、労災保険給付がどれだけ発生しても労災保険料率へ影響はありませんでしたが、5類移行後は、労災保険料率に影響するメリット制(※3)に反映されることになります。(「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」7-問13)

  • (※3)メリット制とは、個々の事業ごとに、労災保険給付の多寡により、給付があった年度の翌々年度以降の労災保険料等を増減させる制度です。

おわりに

 令和2年より始まった新型コロナウイルス対応も、5類へ移行となり、一旦収束の方向へ向かうこととなりました。これからは、個人や企業の判断で感染対策をしていくことになります。法律に基づく外出自粛が無くなり、企業としては判断に迷うケースが出てくると思います。ケース毎に対応が異なりますので、社会保険労務士へご相談ください。





引き続き、感染状況に注視しつつ、少しずつ日常を取り戻していきたいと願います。

参考情報

新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の申請について | 広報・イベント | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)

新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

投稿者プロフィール

兒玉有美子
兒玉有美子こだま社労士オフィス代表 社会保険労務士
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専門分野は①医科歯科クリニック顧問②派遣業支援③女性活躍推進・育休取得環境整備などの人的資本経営サポートです。
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